ビジネスや日常のやり取りで避けて通れないのが、組織の呼び方や名乗り方です。
「御社と貴社の違いは?」「自分の会社は弊社と当社どちらを使えばいい?」と迷った経験はありませんか。
実は、組織ごとに適切な呼び方が決まっており、正しく使うことで相手への敬意を示すだけでなく、自分の印象を大きく高めることができます。
本記事では、一般企業や銀行といったビジネスシーンで定番のものから、学校・官公庁・病院・宗教施設・店舗まで、幅広いケースをわかりやすく解説。
さらに「私ども」といった便利な表現の使い方も紹介しています。
この記事を読めば、どんな相手でも安心してやり取りできる「敬称マスター」になれます。
組織の呼び方・名乗り方の基本マナー
ビジネスの現場では、組織の呼び方ひとつで印象が大きく変わります。
ここでは、自分や相手の組織をどう呼び分ければよいのか、その基本ルールを整理します。
自分の組織をへりくだって表す言葉
自分の組織を表すときは、相手に敬意を示すためにへりくだった言葉を使います。
代表的なのは「弊◯◯」や「当◯◯」、学校なら「本校」といった表現です。
「弊社」「弊校」「当館」などは、ビジネスメールや文書でよく使われる基本の敬称です。
状況 | 例 |
---|---|
会社 | 弊社 / 当社 |
学校 | 本校 / 弊校 |
図書館 | 当館 / 弊館 |
相手の組織を敬って呼ぶ言葉
相手の組織には、敬意を込めて「貴◯◯」や「御◯◯」を使います。
例えば会社なら「御社(おんしゃ)」「貴社(きしゃ)」、銀行なら「御行(おんこう)」「貴行(きこう)」です。
「御社」と「貴社」を混同して使うと不自然に感じられるため注意が必要です。
組織 | 話し言葉 | 書き言葉 |
---|---|---|
会社 | 御社 | 貴社 |
銀行 | 御行 | 貴行 |
学校 | 御校 | 貴校 |
対面と書面での表現の違い
同じ組織でも、対面と書面では使う言葉が変わります。
話すときには「御◯◯」、書き言葉では「貴◯◯」を使うのが基本です。
会話で「貴社」と言うとやや硬く感じられるため、日常のビジネス会話では「御社」が自然です。
状況 | 表現 |
---|---|
会話 | 御社、御行、御校 |
メール・文書 | 貴社、貴行、貴校 |
企業や金融機関に使う呼び方と名乗り方
ビジネスで最も頻繁に登場するのが、企業や金融機関の呼び方です。
間違えると失礼にあたるため、ここでしっかり整理しておきましょう。
一般企業(御社・貴社・弊社など)
一般企業では、会話では「御社」、書面では「貴社」を使います。
自分の会社を名乗るときは「弊社」や「当社」が基本です。
迷ったときは「弊社」と言えば無難で、丁寧な印象を与えられます。
相手を呼ぶとき | 自分を名乗るとき |
---|---|
御社(会話)/ 貴社(書面) | 弊社 / 当社 |
銀行や信用金庫(御行・貴行・当行など)
金融機関は「銀行」「信用金庫」「郵便局」など、それぞれに決まった呼び方があります。
銀行は「御行(おんこう)」と「貴行(きこう)」、信用金庫は「御庫(おんこ)」と「貴庫(きこ)」です。
自分の所属なら「当行」「当庫」と呼びます。
組織 | 相手を呼ぶ | 自分を名乗る |
---|---|---|
銀行 | 御行 / 貴行 | 当行 |
信用金庫 | 御庫 / 貴庫 | 当庫 |
郵便局・組合・協会の呼び方
郵便局は「御局(おんきょく)」「貴局(ききょく)」、組合は「御組合」「貴組合」、協会は「御協会」「貴協会」と表現します。
自分の組織なら「当局」「当組合」「当協会」と名乗ります。
「弊局」「弊協会」なども使えますが、やや硬い印象を与えるため、使い分けには注意が必要です。
組織 | 相手を呼ぶ | 自分を名乗る |
---|---|---|
郵便局 | 御局 / 貴局 | 当局 |
組合 | 御組合 / 貴組合 | 当組合 |
協会 | 御協会 / 貴協会 | 当協会 |
教育機関に使う呼び方と名乗り方
学校関係は種類が多く、どの言葉を使うか迷いやすい分野です。
ここでは、小中学校から大学、幼稚園・保育園までの呼び方を整理します。
小中学校・学園・学院の呼び方
学校全般に対しては「御校(おんこう)」「貴校(きこう)」が使われます。
学園なら「御学園(おんがくえん)」「貴学園(きがくえん)」、学院なら「御学院(おんがくいん)」「貴学院(きがくいん)」です。
自分の所属を名乗る場合は「当学園」「当学院」などを使います。
迷ったときは「本校」「当校」と言えば間違いがなく、相手にも丁寧な印象を与えられます。
組織 | 相手を呼ぶ | 自分を名乗る |
---|---|---|
学校 | 御校 / 貴校 | 本校 / 弊校 |
学園 | 御学園 / 貴学園 | 当学園 |
学院 | 御学院 / 貴学院 | 当学院 |
大学や専門学校の場合
大学は「御大学(おんだいがく)」「貴大学(きだいがく)」、専門学校も同じように表現できます。
自分を名乗るときは「当大学」「当校」といった表現を使います。
「御校」を大学に使うのは誤用とされることがあるため注意が必要です。
組織 | 相手を呼ぶ | 自分を名乗る |
---|---|---|
大学 | 御大学 / 貴大学 | 当大学 |
専門学校 | 御校 / 貴校 | 当校 |
幼稚園・保育園の呼び方
幼稚園や保育園は「貴園(きえん)」と呼ぶのが一般的です。
会話で「御園(おんえん)」と言うこともありますが、あまり広くは使われていません。
自分を名乗るときは「当園」と表現します。
園の運営主体が会社なら「御社」、法人なら「貴法人」を使うなど、組織形態に合わせた呼び方も大切です。
組織 | 相手を呼ぶ | 自分を名乗る |
---|---|---|
幼稚園・保育園 | 貴園 | 当園 |
公共施設や団体の呼び方と名乗り方
公共施設や団体も、正しく呼び分ける必要があります。
病院や官公庁、宗教施設や法人団体など、それぞれに決まった呼び方があるため整理しておきましょう。
図書館・病院・官公庁
図書館は「御館(おんかん)」「貴館(きかん)」、病院は「御院(おんいん)」「貴院(きいん)」と呼びます。
官公庁は「御庁(おんちょう)」「御所(おんしょ)」「貴庁(きちょう)」「貴所(きしょ)」などが使われます。
「当局」は「自分の所属する庁」だけでなく「政府」や「警察」を指す場合もあるため、文脈に注意が必要です。
組織 | 相手を呼ぶ | 自分を名乗る |
---|---|---|
図書館 | 御館 / 貴館 | 当館 / 弊館 |
病院 | 御院 / 貴院 | 当院 / 弊院 |
官公庁 | 御庁 / 貴庁 | 当庁 / 当省 |
社団法人・財団法人・NPO法人・NGO
法人団体の場合は「御法人(おんほうじん)」「貴法人(きほうじん)」が一般的です。
NGOのように法人格を持たない場合は「御組織」「貴組織」と呼ぶのが無難です。
自分を名乗るときは「当法人」「当組織」と表現します。
「弊法人」とすることでより謙虚さを表すこともできます。
組織 | 相手を呼ぶ | 自分を名乗る |
---|---|---|
社団法人 / 財団法人 / NPO法人 | 御法人 / 貴法人 | 当法人 / 弊法人 |
NGO | 御組織 / 貴組織 | 当組織 |
教会・寺院・神社など宗教施設
宗教施設はやや特殊な呼び方をします。
教会は「御教会」「貴教会」、寺院は「御寺(おんじ)」「貴寺(きじ)」、神社は「御神社」「貴神社」と呼びます。
自分を名乗るときは「当教会」「当寺」「当神社」を用います。
「御寺」は口語的ですが、書面では「貴寺」を使うのが一般的です。
組織 | 相手を呼ぶ | 自分を名乗る |
---|---|---|
教会 | 御教会 / 貴教会 | 当教会 |
寺院 | 御寺 / 貴寺 | 当寺 |
神社 | 御神社 / 貴神社 | 当神社 |
店舗やサービス業に使う呼び方と名乗り方
ホテルや飲食店、小売店などのサービス業も、呼び方や名乗り方に特徴があります。
ここでは、日常でよく使うケースを整理しておきましょう。
ホテル・旅館・レストラン
ホテルの場合は「〇〇ホテル様」と呼ぶのが自然で、書面でも同じ表現を使えます。
旅館は「御館(おんかん)」「貴館(きかん)」と呼ぶこともできますが、「〇〇旅館様」と名称に「様」をつける形も一般的です。
レストランは「御店(おんてん)」「貴店(きてん)」と呼びますが、こちらも「〇〇様」と店舗名に直接「様」をつける形が多く使われています。
サービス業では固い敬称よりも、相手が心地よく感じる自然な呼び方を優先するのがポイントです。
業種 | 相手を呼ぶ | 自分を名乗る |
---|---|---|
ホテル | 〇〇ホテル様 | 当ホテル |
旅館 | 御館 / 貴館 / 〇〇旅館様 | 当館 |
レストラン | 御店 / 貴店 / 〇〇様 | 当店 / 弊店 |
スーパーマーケット・小売店
スーパーや小売店では「〇〇スーパー様」「〇〇ショップ様」といった表現が自然です。
書面では「貴店」と表記するのが一般的です。
自分を名乗るときは「当店」や「弊店」となります。
ただし「弊店」はやや古風で硬い印象を与えるため、普段は「当店」を使う方が無難です。
業種 | 相手を呼ぶ | 自分を名乗る |
---|---|---|
スーパー・小売店 | 〇〇スーパー様 / 貴店 | 当店 / 弊店 |
新聞社・放送局の呼び方
新聞社は「御紙(おんし)」「貴紙(きし)」と呼び、自分を名乗るときは「当紙」「弊紙」となります。
放送局は「御局(おんきょく)」「貴局(ききょく)」と呼び、自分を指すときは「当局」です。
新聞社に関しては「小紙(しょうし)」と表現することで、さらにへりくだったニュアンスを出せます。
業種 | 相手を呼ぶ | 自分を名乗る |
---|---|---|
新聞社 | 御紙 / 貴紙 | 当紙 / 弊紙 / 小紙 |
放送局 | 御局 / 貴局 | 当局 |
便利に使える「私ども」という表現
「私ども(わたくしども)」は、幅広い場面で使える便利な謙譲表現です。
会社に限らず、学校・店舗・団体など、あらゆる組織を指すときに応用できます。
「私ども」が好まれる場面
「私ども」は、自分の所属を柔らかく表現できるため、対外的なコミュニケーションで重宝されます。
例えば顧客への案内や、複数人を代表して話すときにぴったりです。
「弊社」よりもやわらかく、「当社」よりも丁寧に響くため、特にサービス業や接客業で好まれます。
シーン | 例文 |
---|---|
顧客対応 | 私どもは全力でサポートいたします。 |
サービス案内 | 私どものサービスをご利用ください。 |
研究・教育機関 | 私どもの研究所では新しい技術を開発しています。 |
「弊社」「当社」とのニュアンスの違い
「弊社」は謙譲色が強く、「当社」は中立的な言い方です。
一方、「私ども」は柔らかさを持ち、組織全体を代表する雰囲気があります。
かしこまった文書では「弊社」、日常的な会話や接客では「私ども」と使い分けるのがおすすめです。
表現 | ニュアンス |
---|---|
弊社 | 謙譲色が強い、フォーマル |
当社 | 中立的、事務的 |
私ども | 柔らかい、組織全体を代表する雰囲気 |
まとめ:組織の呼び方と名乗り方をスマートに使い分けよう
ここまで、組織ごとの呼び方と名乗り方を整理してきました。
最後に、押さえておきたいポイントをまとめます。
まず大前提として、自分の組織を指すときは「弊◯◯」「当◯◯」、相手の組織を指すときは「御◯◯」「貴◯◯」を使うのが基本です。
会話では「御◯◯」、書面では「貴◯◯」を使い分けるのも忘れないようにしましょう。
この基本ルールさえ押さえれば、大きな失礼を避けることができます。
状況 | 相手 | 自分 |
---|---|---|
会話 | 御社・御校・御行など | 弊社・当校・当行など |
書面 | 貴社・貴校・貴行など | 弊社・本校・当行など |
また、業種によっては特殊な呼び方があるため注意が必要です。
例えば、銀行は「御行/貴行」、病院は「御院/貴院」、新聞社は「御紙/貴紙」などです。
業界ごとの呼び方を知らずに「御社」で統一してしまうと、相手に違和感を与えることがあります。
さらに、「私ども」という柔らかい表現も覚えておくと便利です。
「弊社」よりもやわらかく、「当社」よりも丁寧に響くため、特にサービス業や接客業で重宝されます。
正しい呼び方・名乗り方は、相手への敬意を示すと同時に、自分の信頼度を高める大切なマナーです。
場面に応じてスマートに使い分け、安心してやり取りできるビジネスパーソンを目指しましょう。